第一章

4/35
前へ
/133ページ
次へ
 女性限定で、それも大小問わず胸にやや自信の無い人に限られてくると、やはり規模というものは小さくまとまってしまうものだが、しかし自分の胸に不満のある女性には絶大な希望を抱かせる言い伝えは途切れることなく、それこそ脈々と細く長く伝えられ、ルチル・ハーバーグの様な女の子を死にもの狂いにさせてまで招きよせている。実際、彼女がその伝説目的で目指した地であるニペソ村を目の前にして力尽きていれば、その信念というのかいじらしさというのか、はたまた意地汚さというものは、この地に漂う限定的な魔力じみた引力を証明しているだろう。  さりとて。  この物語のメインヒロインであるルチル・ハーバーグが、登場早々に行き倒れてのご退場では、そもそも物語にもなってくれない。  いや、そんな物語があったればこそこの世界に伝わる偉大なる四字熟語――麁枝大葉(そしたいよう)も草葉の陰からにっこりと微笑もうというものだろうが社会に蔓延る世界基準というものがそれを許すはずもなく艱難辛苦の上に成り立ってきた物語自体たちが古今東西にいやさ遍く世界に否を唱えるのはもはや必定なのかという............閑話休題。  直球な物言いをさせてい頂ければ、メインヒロインであるルチル・ハーバーグはこの物語を早々に退場などしない事を先にお伝えしておこう。それはそうだ。メインヒロインが冒頭数ページで遺影として微笑んでいる鬱展開全開の物語など面白いはずがない。  けれど、この物語り。  ルチル・ハーバーグがメインヒロインらしいヒロインとしてヒロイン役を十全にこなせている物語かと問われたとき、この物語の顛末を知っている者達はきっとこう言うに違いない。 〝 ―― うーん、ヒロインではなかったかもしれないね ―― 〟 と。  
/133ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加