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香奈から電話があったのは、それから数日後の夜だった。
「どう?あの眼鏡、ちゃんと使ってる?」
「ええと、使ってみたんだけど……」
「やっぱり!ほとんど使ってないのね!」
香奈はなんでもお見通しだ。
「あの眼鏡、私には大きすぎるし、似合わないよ。恋なんて逆に遠ざかっちゃうよ」
「大丈夫!私にも全然似合ってなかった!」
香奈は電話越しにカラカラと笑った。この笑い方をするときは、すごく自信がある時だ。
「ところでルイ子。今週末の予定は?」
「特になにもないよ。家の掃除して、録画したドラマを観ようかと……」
「駅前に、新しい家具屋さんができたの。そこに行ってきなさい。もちろんあの眼鏡をかけて行くのよ!」
「でも、掃除が……」
「ほら、私、引っ越したばかりでしょ?新居に合うチェストを探してるんだけど、忙しくて。だから偵察してきてほしいの。お願い!」
こう言われては断りづらい。それに家具を見るのは私の趣味でもある。そこを絶妙についてくるのが香奈らしいと思った。
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