ボクはクライマーだった

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 立って手を伸ばせば、ケースの縁に手が届く。だけど、若くはないし、そこをよじ登る力と機敏さを失ったことを自覚しているので、手を伸ばす、首を伸ばすに留めている。大人なボクは無茶はしない。落ちたら痛いしね。  たまにうっかり、手が滑って横向きに大きな音を立てて倒れることもある。そうするとその音で心配して部屋をのぞいたママから「何しとる?」って目で見られることになる。  ボクが部屋の壁に手をかけて両足と尾っぽを使って立っているのには理由がある。ケースが半透明なので外の様子が気になっても見えづらい。よく見るために立って首を伸ばしてるんだ。
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