もう一匹のイチ

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もう一匹のイチ

 ボクがねえちゃんちに棲んで2、3年ぐらいたった頃だったかな。じいちゃんちから戻ってきたママがねえちゃんに言った。 「あれは、いっちゃんではないわ。でっかいアカミミ。電話では聞いてたけど」 「何?」 「かっちゃん(ねえちゃんの6個上の従兄弟)が農道を車で走ってて、見つけたらしい。甲羅に大きな傷があってかわいそうだから、面倒見に来るからじいちゃんちに置いてほしいって」  ママがこれくらい、と手で大きさを示している。どうやら30㎝ぐらいのようだ。 「あのさー、漬物を漬ける桶っていうか樽あるじゃん。ゴミバケツよりちょっと大きいくらいのプラスチックのやつ、あれに入ってた」 「水入ってるの?」 「10㎝も入ってなかったかも。背中出てた」  甲羅はカラスにつつかれたのか、結構な大きさの傷だったらしい。
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