ニホンイシガメのひとりごと

もう一匹のイチ

　ママがボクに話してくれたんだが、お市の方はおじいちゃんちで二冬過ごしたあと、いなくなったらしい(※10)。そして背中(甲羅)の傷は少し盛り上がってはいるもののずいぶんきれいになってたらしい。

※10　旦那の実家でいつもの場所に樽がないのに気づいた。死んだのか、逃げられたのかはわからない。死んだと聞かされたら、アカミミでもかわいそうだし聞かずじまい。
　義母は樽を洗う間、お市の方を裏返しに置くらしく、１回逃げられそうになったと言っていた。大きいので時間がかかるだろうが、起き上がるはず。掃除に手間取ると逃げられてもおかしくない。家の前は水がたっぷりの用水だし、後ろは田んぼが広がっている。敷地内も庭木やら池やら畑やら……逃げられたら長年の田んぼ仕事で足を悪くしていて、腰も曲がりつつある義母には追いつけない。リクガメと違い歩くのは速い。まあ、私でも見つけるのは難しいと思う。
　もともとどこかで飼われていたカメか、その子孫。飼ったなら逃がしちゃだめなんだけど、逃がしてしまったとしても高齢の義母がやっとのことで樽を洗っててだったら、悪いのは義母じゃなくてかっちゃん。拾ってきたら責任持ってよね。面倒も結局義母に任せっきりだったようだしね。
　お市の方って何歳だったんだろう……。