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二月後 長田源一郎 主家に帰参後 同輩に対して
なんと、またしてもその話をお望みか。
なに、最近は何処に行くにしても、その話をせがまれる事ばかりでしてな。些か倦むところも無きにしも非ず。
待たれよ待たれよ、厭と申しておる訳では御座らん、他ならぬ貴殿のお望みとあらば。それに殿からも、なるべく多くの者に物語るようにとの仰せを頂いておるのでな。自ら武勇伝を吹聴するのも面映いが、これもお役目の内に御座る。……然り。藩内に武士としての心構えを保つためにも、拙者が成し遂げた模様を語り聞かす事は、意義のある事と言えようぞ。
何しろ、仇討ちは武士の誉れに御座るからな。亡き我が父に対し、口さがない事を言い触らしていた者どもも、これには口を噤むほか無かろうというもの。
……なに、貴殿の事では御座らんとも。この源一郎を見損なわないで頂きたい。過ぎし日の禍根を引き摺るような女々しい士とお思いか。拙者はかの久保彦衛門を討ち果たせし、長田源一郎。殿のご近習、五十人扶持の身に御座るぞ。
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