二月後 長田源一郎 主家に帰参後 同輩に対して

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 然り。確かに貴殿の仰るところ、一々ご尤も。仇討ちなど本来、失敗して元々、それを前提としているとしか思えぬ仕来(しきた)りに御座る。  おや、言葉が過ぎると仰るか。(いや)(あなが)ちそうとばかりも申せまい。近頃の大公儀の為されようをご覧あれ。さながら鉢植えが如く大小名を土地替えし、重箱の隅を突いてお家を取り潰し、日常茶飯の如き喧嘩沙汰にすら目くじらを立てる。  この日ノ本六十余州より戦争(いくさ)の種を絶やし、天下泰平の世を到来せしめる。それは確かにご立派な、応仁以来の貴賎老若男女誰しもが(こいねが)う楽土に御座ろう。しかれどもそれは必然、我ら戦人(いくさにん)から戦国の気風を奪い去る事にも繋がるのでは。そして大公儀のお考えは、正に其処にこそあるのでは。この源一郎めにはそう考えられてならぬので御座る。  呵々(カカ)、無論大声では言えぬ事。他ならぬ貴殿だからこそ申し上げたまでに御座る。     
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