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委員会で遅くなった、先週の帰り道。
足早に学校近くのスーパーの前を通り過ぎようとして、偶然見かけてしまったのだ。
3歳くらいの弟を肩車して、小学生の妹と手を繋いで、スーパーから出てきたばかりの城戸くんを。
もう片方の手には、スーパーで買い物した袋がぶら下げられていて、高校生男子と買い物袋、というアンバランス感がなんだか微笑ましい。
私は思わず足を止めて、
その様子に見入ってしまった。
制服姿のままの彼は、
保育園帰りだろうか、園服に園帽子を被った弟にふざけて髪を引っ張られて
『痛い、痛い!』と頭を振っている。
痛がる兄を見てケラケラ笑う妹に、
城戸くんは『雛、笑ってんじゃねぇ』と口では怒りながらも、
その表情は相反していた。
「……あんな顔、するんだ……」
学校で見せる無邪気な笑顔とは違って、
愛しいものを見つめるような、優しく穏やかな笑顔。
その表情に、胸がギュッと掴まれたような感覚がした。
こんな気持ちになるのは、生まれて初めて。
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