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城戸くんの家は、シングルマザーでお母さんが働きに出ているらしい。
弟のお迎えや夕飯の支度を彼がやっているというのは、前に友達との会話から聞こえてきたことがあった。
運動全般なんでもこなせる城戸くんが、部活に所属してないのはそういうことだったんだ。と、そのとき納得したのを覚えてる。
周りの友達から、大変そう、自分の時間がなくて可哀想、などと言われたときにも、
『妹たちが可愛くて仕方ないから、全然苦じゃないんだよなー』と、笑いながらあっけらかんと話していたのが印象的だった。
思えばあの時から、
彼のことを意識していたのかもしれない。
……城戸くんが弟と妹に見せた、
あの笑顔が頭に焼き付いて離れない。
誰からも好かれて、明るくて、
何となく世界が違う人のような気がしてた。
奥手で、人見知り、男の子と話すのが苦手な私には、
高望みな恋だと。
でも……
やっぱり、話してみたい。
あの笑顔を、近くでみてみたい。
願わくば……私に、笑いかけてほしい。
彼に、どうしようもなく惹かれてしまったから……
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