気になる彼とそのあとは

気になる彼と近づく方法

「……こんな本まで、買っちゃったし……」

また、パラパラとページを捲る。

文庫本より少し大きなその本の表紙には、
『気になる彼と近づく方法』と、
ピンク色の可愛い丸文字。

タイトルがストレート過ぎて、レジに持っていくのが気が引けて、30分くらい本棚の前でウロウロしてしまったけど……結局買ってしまった。

朝のこの時間しか読まないけど、さすがに恥ずかしいからお気に入りのブックカバーで隠してある。

ふと、最後の方のページに目がとまる。

『気取らず、飾らず、ありのままの自分で
素直に気持ちを伝えてみましょう。』

……ありのままの自分に自信がないから、
困ってるんだよなぁ。

恋愛のドキドキも、ソワソワも、モヤモヤも、
今までいろんな本から教わってきた。

でもそれはリアルじゃない。
イメージは出来るけど、実感は出来ない。
現実は、こんなにも縁遠いものだったから……

はじめての感覚に、戸惑うばかりだ。

小さな溜め息を溢したところで予鈴が鳴り響いて、

「やばっ」

私は慌てて片付けをして図書室をあとにした。