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「イッ……テェ~」
「ぶはっ!お前、何やってんだよー!」
周りから笑いが起こる。
「うわ、やっちまった……」
転んだ男の子も、腰を擦りながら私の散乱した荷物に気づいて、マズイという表情をした。
「あ、大丈夫……!」
……何も言われてないのに大丈夫ってなんだろ。
コミュニケーション能力が乏しいと、咄嗟の会話の引き出しが無くて困る。
「おい、お前な……まず最初に謝れよ。」
散らかったお箸セットを片付けていると、頭上から聞き慣れた声がして、反射的に頭を上げる。
城戸くんが、転んだ男の子の頭を小突いて、
「ごめんな、奥原さん。怪我ない?壊れたものとか……」
なんと、彼は眉を下げて申し訳なさそうに、
私に向かってそう話しかけてきたのだ。
「えっ、あ、はい……」
まさかの、これが初会話。
たった一言のやりとりなのに、頭が真っ白になってしまって、見上げたまま軽く放心してしまった。
城戸くん、私の名前知ってた……!
「えーっと、奥原さん、ホントごめんっ!俺も拾うから!」
転んだ男の子も、城戸くんにつられるように深く頭を下げて、散らかったものを集めてくれた。
「ん?ごめん、これカバー外れちゃったみたい」
声のする方を見ると、
少し大きめのブックカバーを無理矢理被せていたあの本が、半分剥き出しになって男の子の手の中に……
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