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「わたしは!
首を飛ばされるようなことはしてません!」
隣の家のいじめっ子を肥溜めに突き落としたり、三軒隣の嫌味なおばさんに、まだ熟れていないミカンを絞った酸っぱいジュースをプレゼントしたりはしたが、どれもこれも子供がよくやる可愛い悪ふざけのようなものだ。
しかも、おじぃとおばぁにそれらがバレて、ホウキでお尻が腫れ上がるほど叩かれるという制裁を受けたから、悪さもチャラになっていないとおかしいと思います。
理不尽な命の危機に猛烈に腹が立って、思わず熱弁を振るいながら、うら若きか弱い乙女に剣を構えた無礼な男を睨み上げた。
おや……?
こちらを瞬殺する勢いの鬼の形相から打って変わって、鳩が豆鉄砲を食らったような表情を浮かべる男は、よく見れば素晴らしく整った顔立ちをしていた。
耳に掛かるプラチナブロンドの髪は手触りの良い高級な羽毛のようで、淡く透き通る翡翠色の瞳は見るもの全てを魅了する魔性を秘めている。
地を這う重低音を奏でていた忌まわしい唇も、見事なまでに艶々に輝いてい
「お褒め頂き光栄だが……もう口にしなくていい」
「出てましたか?」
「ああ。君の昔話も大変興味深かったよ」
口角がゆるりと上がるのを見て安堵した。
良かった……あらぬ誤解が解けたみたいで。
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