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「………」
いたたまれません。逃げ出してしまいたい。
きちんと説明しなきゃ、ややこしいことになるのは目に見えていたのに。
全く聞く耳を持ってくれないアルディさんが怒鳴り散らすから、最悪な形でお父さんが起きてしまいました。
今はアルディさんに構っているヒマはない。
「娘を痛めつけた手を木っ端微塵に粉砕する」と怒り狂うお父さんに、「あれはいつものスキンシップですよ」と言えば、「いつも?! 我の娘はいつも暴力に晒されてたのか!貴様っ、楽に死ねると思うなよ!まずはその忌々しい目をくり抜いてくれるわ!」
と、怒りに火を注ぐ結果になりました。ヤバイ!
「お父さん!待って下さい! また恐ろしい発言が出てますよ。き、嫌いになってもいいんですか?!」
「ななな何言ってんのっ!ダメ!そんなの絶対にダメだ!あり得ない!わ、分かったから怒らないでお願いお願いお願いしますぅ!」
掴んでいたアルディさんの手をポーンと投げ捨てて、わたしに泣いて縋るお父さん。分かってくれたらいいんですよ、と優しく抱き締めながら落ち着くのをひたすら待つ。待つ。待つのみだ。
背中をポンポン。頭をヨシヨシ。頬をナデナデ。
ひとしきり宥めたあと、放っておいたアルディさんに視線を流せば、彼はその場で固まったまま微妙に引きつった顔をしておりました。
「……とんでもないイカレ野郎を拾ったな」
うん。言いたいことは分かります。凄く。
わたしも実際に目にしなければ、きっと同じ事を呟いていたはずなんで。
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