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「知っているか?
貴族の屋敷に不法侵入した者は殺されても文句は言えないと」
「勿論です。
うちの村は王都の外れも外れ、辺鄙な所でしてね。娯楽と言えば村唯一の本屋なんですが……」
「どこの村だ」
「ポロ村ですよ」
いま村の女性の間で大人気となっているのが、我がジュール王国の宮廷騎士団をモチーフにした恋愛小説だ。
何でも宮廷騎士の実話の恋物語というのがウリで、それだけでもテンション上がるってものですが、更にですね、そこに陰謀だの良からぬ創作を交えたものが加わって、ハラハラドキドキスリル満点の作品に仕上がっているんですよ。
行ったこともなければ見たこともない王都の常識や麗しの騎士様については、その本に詳細に記され……
ええと確か題名は、
「魅惑の騎士様の甘い誘惑……だったかな」
「そう、それです!」
宮廷騎士シリーズ1話目にしてわたしを虜にした愛すべきバイブル。
擦り切れるまで何度読み返したことか。
主役の騎士様が半端なくカッコよくて、本当に実在するのか疑わしいけれど、会えるのなら死ぬ前に一度でいいからお目にかかりたいと常々思っている。
「クロードだ」
「騎士様の名前まで覚えてるんですか!」
なんとっ!
ここにも小説のファンがいるなんて。
ポロ村の男性陣にはボロクソに言われてイマイチ受けが良くないというのに……ちょっと衝撃で感動に震えます。
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