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最後に図書館に案内したら、お父さんは懐かしそうに古代書や歴史書コーナーの前で長いこと足を止めていた。
王族だから古代文字など読めて当たり前なのに、何も手に取らず眺めているだけなのが妙に気になってしまう。
ラウル様に言って貸し出し禁止を解除してもらうか、お父さんだけ特例として読ませて貰えないだろうか。
「我の書いたものがある。所蔵されてるとは知らなかったな」
「ジュールでもありましたよ。イカれ……じゃない、古代魔術書なる大変素晴らしいものが」
「ああ、思い出した。煩い側近どもが書けと言うから適当に書いたものだが、あのような嘘っぱちが今も残っているのか」
信じられんな、と笑うお父さんに密かに頷いた。
やっぱりアレはイカれた書物で正解だったんだな。
「お父さん。素朴な疑問なんですが、わたしは一体どちらの子供なんでしょう」
「……気になるか?」
「そりゃあなりますよ。あと、お母さんの」
「サエ。聞きたいなら話してもいい。……だが、誓ってくれないか。我を嫌わぬと」
「……貴方が嫌われるような極悪非道な人には見えませんので誓ってもいいですが……そう言われたらですね、聞くのがちょっと怖くなりました」
正直に答えると、泣き笑いのような何とも言えない表情で「やめておくか?」と問われ、息が詰まってしまう。
こんな風に2人きりで話すことは、クロードさんの屋敷ではなかったことだ。目先の問題ばかりで、先送りにしていたものが急に目の前に現れたような気がして。
咄嗟に、つい勢いで言ってしまったが、果たして聞いて良かったのかどうかも分からない。
けれど、今を逃したら永遠に聞けないと思っていた。見てるこちらが辛くなる顔をするのは、きっと言いたくないからだろう。それでも、いや、それだからこそ。
「やめません。いつかは向き合わなきゃいけないと思ってました。お父さんさえよければ教えて下さい」
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