304人が本棚に入れています
本棚に追加
その日の夜、わたしはとんでもない夢にうなされた。
いつものようにポロ村の固くて平らなベッドの上で、おじぃやおばぁにバレないように豆球の薄暗い明りの中で、騎士様シリーズにぐふぐふにやにやと転げ回っているとですね……
突然、ガシッと布団から生えてきた腕が身体に巻き付いてきたのです。
はれ? なんじゃこりゃ?
『捕まえた。もう2度と離さねぇからな』
『えええっ!! ちょっ、困ります!』
喋った! 妖怪布団が喋りましたよ?!
どこに口があるのか分からないが、解けない腕とどっかで聞いた事のある声にギョッとする。
『なんで? ……俺のことが嫌いなのか』
『いえまさか! 貴方は素晴らしい寝心地と安眠をくれるのに、嫌いなわけないですよ』
『じゃあ……俺とその本、どっちが好き?』
瞬間、ドキーーンっと心臓が跳ね上がった。
あれ……あれれ……この感じ、前にも一度体験したような気がします。……どこでだ? 思い出せないけど、なんだか凄く焦って来ましたよ?
背中にぐぐぐッと力を込められる。まるで早く答えろと言わんばかりの腕の強さだ。
苦しい!骨が折れます!ギブ!ギブ!ヘルプミー!
掻き毟るようにしてシーツに爪を立てたら『イテェな』と耳元で囁かれた。だからその声やめて!と息苦しいなか訴えれば、みるみる内に妖怪布団が人型を作り上げ……
『本より実物がいいと言わせてやるよ』
「ぎゃああぁぁああーーーっ!!」
叫びと共に飛び起きた次第であります。
最初のコメントを投稿しよう!