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失敗した。話す順番を間違えました。
現実で食らったあの衝撃を、まさか夢の中でもう一度食らわされるとは思ってもみませんでしたよ。
恐るべし百戦錬磨サマ。
彼の口説き文句を求めた時は絶対に言わねぇと断言されたのに、どういう風の吹き回しだろう。
だいぶ遅れて期待に応えてくれたんでしょうかね?
真剣に悩んでいたわたしを見兼ねて。
しかしアレはタイミングが良すぎたと思います。危うく本気で言われたと勘違いしそうになりましたので。まぁ、そこは経験値の差が出たのでしょう。
ははは。ないないない。あのアルディさんですよ? ないないない。天地がひっくり返ってもあり得ないですね。
「サエ!大丈夫か?! 誰かに襲われたのか!」
「ぶっ!……お、お父さんっ!」
叫びを聞きつけたのか。
いの一番に降って湧いた黒い長髪の持ち主が、血相を変えて抱き締めてくる。
「サエ、サエ、大事ないか?!」
心配してくれてありがとうございます。
少々、夢見が悪かっただけですので誰のせいでもありませんよ。……しいて言うならですね、いま貴方の筋肉質な胸にぶつけた鼻頭がひね曲がったぐらいでしょうか。
ツーンとした痛みに生理的な涙が溢れたと同時に、表の扉が勢いよく開け放たれた。
「「「 サエっ!……っっ!!」」」
「お父さん……もう少し手加減して頂かないと、わたしは壊れてしまいます」
「あ、悪い……久しぶりに人を抱くからまだ加減が難しいようだ」
「「「 ベリスっ! お前何やってんだっ!」」」
え……?
しっかりとベッドの上で抱き込まれていたわたしに、またもや鬼の形相をした3人が突撃して参りました。
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