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テーブルの上で立ち昇る茶器の湯気と、山盛りに置かれた沢山の種類のお菓子たち。
これらはコルゼさんによって手早く、けれど優雅に用意されたものであり、そして言うまでもなく彼女はする事を終えたら早々に退出されました。
「やっと2人きりになれたね。しかもサエからのお誘いってところが凄く嬉しい」
対面に座したわたしとラウル様の距離は適切なはずなのに、やはりあのぐるぐると溶かされそうな甘い芳しい香りのせいで、見た目以上の近さを感じてしまいます。
密室の空間は避けるべきだったか……
爽やか過ぎる笑顔と相まって、わたしの脳みそが腑抜ける寸前である。……いかんいかん。
「ラウル様。本題の前に質問があるんですけども」
貴方が敵に向ける苛烈さや民衆に向ける優しさという二面性は、わたしを大いに混乱させました。
今は自国を思うが故の行動と王たる役目がそうさせたんだってことは、何となく理解している。
だけどですね……この新たに沸いた謎な部分は全く解明されていないのですよ。
ラウル様は、
わたしの腕がもげてもいいと言いました。
怪しげ香で手籠めにしようとなさりました。
自分のプライドを守る為に騙し討ちのようなキスもしましたね。
わたしはわたしで、
貴方を貶める発言で村八分になり、調理場を荒らし、繋がった扉を塞ぎ、説得すると息巻いていたくせに結局は逃げ出して……
まとめるとですね、上記の2人の関係性において、恋愛感情が芽生える要素が皆無では?って思うのですよ。
「つまり……君は僕の恋心を疑っているってわけだ。そして君自身も僕に対して何の感情も持ち合わせていない。……質問と言いながら随分と残酷な答えを出してくれるじゃないか」
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