追う者と追われる者。恋愛の終着点はどこですか?

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ドゴォォォーーン!! 目前に迫る唇が自分に到達する手前だったと思う。抑え込まれて身も捩れなくて、受け入れざるを得ない体勢に焦りと凝視しがたいイケ顔に目を閉じた瞬間、何かが吹っ飛ぶ音がした。 「今度は扉か。少しは行儀が良くなったようだな、どぶネズミ……」 「まあな。前と違って客人だから一応、礼儀は弁えたつもりだ」 キィキィと蝶番の軋む鈍い音。外れそうな扉が不安定に揺れている。突然過ぎて声も出ず、それらをぼんやりと眺めていたら、廊下に佇む人物が足早に部屋の中に踏み込んで来た。靴先が視界に入ったところでようやく脳が動き出す。 「立てよ、ラウル王。このままだと俺に蹴り殺されるぜ」 「……見張りの兵が見当たらないということは、どうやら本気みたいだね」 仕方ないなぁと言いながらわたしの上から重みが無くなっていく。窮地を脱した安心感に息を詰め強張っていた身体が解けるのを感じた。 「つくづく僕には邪魔が入るらしい。興醒めだよ。今回は大人しく引き下がるけど、次回は2人きりで濃密な時間を過ごしたいものだね」 「次回なんてあるか」 「っっいた!」 ラウル様に差し出された手を取ろうとして、伸ばした手が意思とは違う方向に向きを変える。グキッと強制的に曲げられ引っ張られ辿り着いた先は、どぶネ……アルディさんの胸の中でした。 「クロードへの忠義も大概にしろと言いたいが、どうやら違ったようだな。まさかお前までとは思わなかったよ」 「理解したなら話は早い。ラウル王、あの時の借りを返させてもらうぞ」 ……あれ? つり目が見える。超間近に。すぐそこに。 僅かに眇められてはいるが、逸らすことを許さない目ヂカラで覗き込まれている。 何で……と思ったのはほんの一瞬だった。 「おいっ!」 焦ったような上滑りの声が遠くの方で聞こえたのと、頬から滑った親指がわたしの口の中を押し広げるのとほぼ同時。唇に落とされていた熱がこじ開けるようにして中に入り込んで来た。
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