追う者と追われる者。恋愛の終着点はどこですか?

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本日の老人会も大盛況だった。 進行役をこなし終え、素晴らしい手品を見終わった皆様がお父さんに殺到している。 老人会なのにいつの間にか村の同志たち、騎士様シリーズのファン一同の若い娘たちも、お父さんに熱い視線を向けてキャーキャーと群がっていた。 ミーハーたちよ。 確かにお父さんは青年にしか見えないし整った顔立ちをしておりますが、付き合って欲しいとか後妻にして欲しいとか軽々しく言うのはやめて頂きたい。 本当に好きになったのならいいけれど、見栄えに目がやられているのは一目瞭然だから。 村の男達は芋の煮っ転がしで、お父さんや騎士様は高級なフルコースだと陰で言っていたのを知っている。 自分もその煮っ転がしの部類なので何とも言えないところですが、同志たちよ。高級なフルコースなら誰でもいいのか。 と、ちょっぴり腹立ちを覚える今日この頃です。 複雑な気持ちはあるけれど、レアル王でありベリスさんでもある王族のお父さんが、村に溶け込む姿はやっぱり嬉しかった。自分の都合で来て貰ったし、馴染めるかどうか田舎過ぎて嫌になるんじゃないかと心配だったけど…… 「大昔の我の出自など気にする必要はない。王族だった時よりも獣の姿の方が遥かに長い時を過ごしておるからな。それに言ったであろう? サエがいるならどこでもいいと。我が選び娘の故郷となったポロ村で暮らす事に異論などあるわけなかろう」 と、不安をバッサリ切り捨ててくれたので、わたしは大泣きしてしまいました。 今まで親が居ない事を寂しいと感じた事はない。おじぃやおばぁは勿論のこと、村の皆が家族のように時に厳しく時に優しく接してくれたから、それだけで十分過ぎるぐらい幸せだと思っていた。 だけど……違った。その上がありました。 お父さんとは歪な関係で本当の肉親とは言えないけれど。お父さんからの愛情は紛れもなく本物だと感じるから。 ポロ村を好きになってくれて、肯定してくれて、側にいてくれることが超幸せで泣けてくる。
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