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まったりと心地よい時間が過ぎていた。
赤ん坊の頃に王都で行方不明になったわたしを、ずっと探し続けていたお父さんという嘘の作り話は、いたくおじぃやおばぁの同情を引いたようです。
出会えた奇跡を我が事のように喜び、お父さんを息子同然として家に迎え入れ、わたしと何ら変わりない愛情を持って家族の一員にしてくれました。
後で知ったことだが、おじぃやおばぁは最初お父さんに遠慮していたらしい。
本当の親が現れたのだから、育ての親であるわたし達はサエをお父さんに返すべきだという理屈で。
迷惑でなければ一緒に暮らしたい。サエもそれを望んでいるとお父さんが言ってくれたから良かったけれど。
理屈ってなんだ。そんな事を考えていたなんてショックだった。おじぃとおばぁは誰が何と言おうとわたしの親なのに。
新しく家族の一員になったお父さんは、わたし以上におじぃとおばぁと仲良くなっている。それは大変喜ばしいことだが、少々嫉妬を感じています。
「サエ、今日こそは我と一緒に寝よう」
「嫌ですよ。おじぃとおばぁとどうぞ」
「なんだ。拗ねておるのか」
「……違います」
夕食の団欒は賑やかだった。
毎日のようにおじぃの晩酌に付き合っていたお父さんが今日に限って早めに切り上げたらしく、わたしの部屋に尋ねて来る。
「じゃあサエが寝るまで話しをしよう」
「話してたら眠れないじゃないですか」
「そうだな……だけど、そろそろサエは我に言わねばならぬことがあるだろう?」
図星を指されてしまった。
このまま逃げ続ける事は出来ないと悟り、大人しく部屋に招き入れることにする。
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