305人が本棚に入れています
本棚に追加
ぽかぽかと太陽のいい日差しは眠気を誘う。
乾季を過ぎて雨季がやって来る間のポロ村は、気候が安定した今が一番過ごしやすい季節でもあった。
互いに黙っているけれど苦痛じゃない。
王都の貴族様がこの場にいることはおかしいけれど、何となく最初に感じた違和感はなくなったように思う。
自分の緊張が取れたからだろうか。
それとも、クロードさんの醸し出す柔らかな雰囲気がそうさせたのかな。
風に揺れる黄金色の髪と麗しいまでの端正な横顔に見惚れていると、ふと目が合った。
慌てて目を逸らす前に名前を呼ばれてしまい、疚しさから右往左往する視線。挙動不審なわたしの名前をクロードさんにもう一度、今度はもっとはっきりとした声で呼ばれピタリと絡まった目は、穏やかな笑みが含まれている。
あー、うん。そうですね、と観念した。
クロードさんは促している。
言い出せないわたしに目だけで訴えていた。
優しい仕草だ。逃す気はないようだけど。
「俺を呼んだ理由があるんだろう?」
「……はい」
「聞かせて欲しい。いや、聞く準備が出来たと言うべきだな」
どうしてこういう時だけ察しがいいのだろう。普段は尋常じゃない妄想をされるというのに。
「言いにくいなら俺から言おうか?」
「いえ……ちゃんと言いますよ」
貴方も伝えてくれたから。
始めから真っ直ぐにぶれずに……ずっと。
だからわたしも逃げません。出した答えをいま返します。
最初のコメントを投稿しよう!