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初めての恋は、自覚した瞬間に卑劣な暴走をして、優しくすることも想いを告げることも出来ず、あっけなく終わった。
本気らしい。
術でも何でもなかったらしい。
しかも、すでに、付き合っている。
クロード様とイモが。クロード様とイモが。
クロードさ……理解するのに何度か頭の中で繰り返してしまった。
顔を赤くして、俯いて、もじもじしているイモは、戸惑っているものの嫌がっている素振りはない。
瞬間、理解した。それはもう凄い早さで。
クロード様は優しい。顔も身分もいい。
小説の中の騎士様の如く、お前が好きそうな甘い囁きだって躊躇なく言うし、デロデロに甘やかしてくれるだろう。
俺みたいに作った演技じゃなくて。
本物の王子様みたいに。偽りもなく。
素でそれなんだから、素がお前に接するままの雑な態度の俺が勝てる要素は微塵もなかった。
お前はクロード様を好きなんだろうな。
今はまだ小さくて淡い想いかもしれないが。
けれど、だからと言って、俺がお前の側から離れるっていうのは嫌だと思った。
この間のように、泣きたくなったら胸を貸してやりたいし全力で慰めてやりたい。クロード様とは違う俺は俺なりのやり方で。
だから、悟らせるわけにはいかない。気取られてはならない。クロード様にもお前にも。
お前が幸せで、笑ってくれるなら、自分の想いなんか心の奥底に閉じ込めてやる。
完
( 始めの頃のアルディさんでした。
彼はけっこう早くに好きになってたんですね。で、割と鬼畜ってます。その後、想いを隠しまくるんですけど、最後の方はサエのせいでおかしくなっていくという。笑 )
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