いざ、王宮へ

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「それは名前を貸して貰っただけですわ。 容姿抜群、知名度抜群の宮廷騎士団長の実話にした方が女性受けも良いと思って」 「では……実話も嘘でしょうか?」 「いいえ。 私、どの女性にも靡かないクロードから隠れた恋愛遍歴を聞き出したかったの。ただの興味で。 けれど、彼は何も教えてくれないばかりか、自分よりも部下の方が良い話が聞けると言ったのよ」 「ま、まさかと思うのですが……」 「ふふ。当たりよ。 過激な内容の恋愛小説は全部アルディのものよ。 王の気を引く為に書いたものが、今では趣味になってしまったわね」 不意打ちで頭をボッコボコに殴られた気分です。 今日だけで許容範囲を超えた話がいくつも出てきたけれど……この事実は更にその上をいったようだ。 「そうだわ。最新刊がもうすぐ出来上がるんですの。サエ様、見たいかしら?」 「見たいです!」 事実を知った後でも長年の熱烈なファンの想いは消えなかった。即答って…本人が後ろにいるのに何てことだ。 「じゃあ交換条件を飲んで下さいますね」 「え、交換……え?」 「私に術を授けてくれるなら小説を最後まで書き上げます」 「じゅ、術を習得するのはかなり難しく」 「望むところですわ。 王を貶める噂を一蹴できて子もできるのなら、どんな苦労も厭いません」 それが王妃たる者の務めでございます。 と、毅然とした態度の前に返す言葉が見つからなかった。
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