いざ、王宮へ

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うっかり上げた声を両手で塞ぐ。 怪訝な顔付きで、どうした?とわたしの目線を追おうとする彼の顎を頭突きで押し戻した。 「っ!何すっ!」 「声出しちゃダメです」 涙目で怒りを露わにするアルディさんに素早く背中を重ね、木の陰から出来るだけ出ないようにもう一度確認する。 やっぱり……ノエル様だ。 別に隠れる必要はなかったが、顔を合わすのは避けたい本音が咄嗟の行動に現れた。 人の事を黒頭巾黒頭巾と呼んでいましたが、自分だって神官の正装は青頭巾じゃないかと、言えなかった言葉を小声で吐き捨てる。 「何してるんでしょうね?」 慎重にキョロキョロと辺りを見回し、入念に警戒している模様ですが、葉っぱが邪魔でよく見えない。 首を伸ばしてしっかり見ようとしたら、アルディさんの腕に引き戻されてしまった。 痛い……いま、首がグキッて変な音を立てましたよ。 頭突きの仕返しが乱暴過ぎやしないかと文句を言おとしたら、回された片方の二の腕に鼻と口を塞がれる。 「動くな。黙ってろ」 ちょ、ちょ、苦しいのですが! わたしを永遠に黙らせるつもりかと暴れたら、今度はもう一方の腕が身体に巻き付き両手を封じ込められる。 この馬鹿力!離せ!息が限界だ!
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