いざ、王宮へ

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バザバサと鳥の羽音が響く。 天国に連れて行ってくれる使者様が来たのだと思ったら、フッと腕の力が緩み一命を取り留めた。 新鮮な空気を思い切り肺に詰め込む。 落ち着きを取り戻したところで背後のアルディさんを睨み上げれば、彼はあらぬ方向に鋭い視線を向けていた。 「使者様に失礼ですよ」 「何を言っている。あれは隣国の伝書鳩だ」 へぇー、そうなのか。 ただの鳩でも使者様でもなかったのかと、大空に舞った姿を一緒になって眺める。 「何故、隣国の鳥が王宮に?」 「お前にしてはいい質問だ。だが、それを説明する前にクロード様に報告するのが先だ。帰るぞ」 「待って下さい!ノエル様が」 「奴ならもう居ない」 本当だ。影も形もありませんね。 左右を隈なく確認しても全く見当たらず、おじいちゃんなのに何て足の速さだろうと感心していた。 「短足。早く来い。迷子になっても知らねーぞ」 「短足じゃないですよ。普通です。貴方の足が異常に長いだけですからね!」 鮮やかな緋色のマントを翻しさっさと歩き出すアルディさんに、貶めるつもりの褒め言葉を背中に投げつける。 笑いながらそれを受け流した彼は、お前の思考回路はズレてんな。と、明らかに貶した言葉を頂きました。 何をー!と、緋色のミノムシが小走りで追いかける。 歩いているだけの彼と違い、同じ姿なのにこの落差は何なのかと悔しく思いながら。
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