いざ、王宮へ

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「さて……、言い訳があるならして貰おうじゃねーか」 いとも簡単に元の場所に連れ戻された。 ポイッとゴミでも捨てるような乱暴さで床に転がされたわたしは、閉めた扉の前で仁王立ちする鬼に縮こまる。 「怖くなってトンズラか?」 「……分かってるなら聞かないで下さいよ」 「随分と部屋の中が簡素になってるな」 「……それも分かってるくせに。分かりました。お返ししますよ」 担いでいたシーツの結び目を解いて、中身を全部アルディさんに差し出した。 「壺に絵画に羽根ペンに……タオルまで!何枚入れてんだよ……根こそぎやりやがったな」 「人聞きの悪いことを言わないで下さい。入らないものや重いものは諦めておりま…!!」 「ああ?なんか言ったか?」 両方のこめかみをギリギリと締め上げる拳に容赦がない。痛さのあまり素直に非を認めて謝罪した。 「物品は諦めます。その代わり…貴方の身につけているこのネックレス…高価なものだとお見受けしました。わたしにくれませんかね?」 「捕まえた盗っ人にくれてやるバカがどこにいる」 「だって…逃げるにも路銀が必要ですから」 無一文で世を渡れるほど甘くないことは知ってます。アルディさんがバカになってくれなきゃ、わたしは野垂れ死にしてしまうんですよ。 だから下さいと、半ば強奪に近い形で力任せにネックレスを引っ張った。
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