いざ、王宮へ

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プツリと切れた宝石が辺りに散らばる。 部屋に弾けた音を立て、闇に消えていく。 「……欲しいんじゃなかったのか?」 「欲しいですよ。でも、でもですね、貴方が居る限りわたしは逃げれないじゃないですかっ!」 もう限界です。と、滲んだ視界が訴える。 泣き顔を見られまいと背を向けて、込み上げる嗚咽を必死で堪えていた。 「わたしは魔術なんて使えません。何度も言ってるのに……どうして分かってくれないんですか?」 「クロード様の、あれが演技に見えたか」 「……村娘を襲うなんて、ますます頭がおかしくなったようですね」 「違うだろ。お前は分かっているはずだ」 「知りませんし分かりませんよ」 「本当にそう思ってるなら逃げる必要はなかったはずだ」 「いつだって逃げたかったですよ!」 「じゃあ何故逃げなかった。今までずっと居たくせに、今日を決断したのはどうしてだ? 自分の魔術を目の当たりにしたからだろ。 クロード様が演技じゃなく本気だと知ったからお前は」 「やめて下さいっ!それ以上言ったら怒りますよ!」 もう怒っている。誰に、何に対してか分からずに。 クロードさんがあんな品のない冗談をするとは思っていない。する必要もないぐらい女性にモテモテだから。 けれど、じゃあどうしてだ?と考えたら、思い当たる節は一つしかなかったのだ。
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