謎に蹴躓いて陰謀に囚われる

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照りつける日差しに流れ出る汗。 青々とお生い茂る木々の間、広く切り開かれた空間で、黒頭巾サエは王妃様と一緒に妖しく蠢いていた。 「はぁ…はぁ…サ、サエ様。 こ、これも準備というものでしょうか?」 「そ、そうですよ。 全部覚え切らないと次の過程には進めません」 王妃様。ここに辿り着くまで、大変苦労しましたよ。 向かう場所が同じなので、クロードさんと馬車に乗り込むことになったのですが…… 極上の微笑で座れと言いながら自分のお膝をポンポンなさるので、いえいえ結構ですと丁寧にお断りするとですね、物凄い力で腰を引かれたんです。 グラついた身体がコロンと…転がるように彼の元へ行きまして、座るどころかお膝の上でお姫様抱っこされるというとんでもない事態に陥りました。 わたし、騎士様シリーズが大好きです。 恋愛小説の濡れ場なんてよだれものの好物です。 しかしですね、それが自分の身に降りかかるとなると話が違いまして。免疫がないんです。 恥ずかし過ぎてショック死しそうになりました。 アルディさんは何食わぬ顔で向かいの席に座り、ほどほどにして下さいよ、と柔らかく注意するのみで、後は薄情にも素知らぬフリをしておりました。 儀式の5分を大幅に超えたクロードさんのスキンシップに、降りる時は腰が抜けるという有様のわたしをですね、アルディさんは黒頭巾の襟首を掴みここまで運んで下さったのです。
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