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助けてくれなかった彼に、役立たず、アホウ、つり目、と散々罵っていたところを王妃様ご一同と会う羽目になったのも、全部、その木の陰で肩を震わせて笑っているアルディさんのせいでして。
わたしはいつも、そんな汚い言葉を吐くような人間ではないことだけは分かって欲しいのです。
「王妃様。お疲れになられたでしょう。少し休憩をなされてはいかがですか?」
「そ、そういう訳には参りませんわ」
「棍を詰めると返って良くありません。
なので、この続きはわたしとアルディさんとでお見せしましょう」
「なっ!!」
「まぁアルディ、貴方も術の勉強を?」
「ええ。実はアルディさん、わたしの一番弟子でして。彼はなかなか筋がいいので王妃様の良き手本になるでしょう」
ささ、こちらにどうぞと、顔を引きつらせる彼ににっこりと笑いかける。
王妃様の期待の眼差しに堪え兼ねたのか、観念したように緋色のマントを脱ぎ去った。
「後で覚えてろよ」
ドスの効いた囁きも、今のわたしはおかしくて吹き出しそうになる。
王妃様に術を授ける前に準備が必要だと説き伏せて、ポロ村のラジオ体操を教えていた所だ。
昨夜アルディさんの前でやったら、何だその変な動きはと、大笑いされてしまいました。
第10まであると言ったら更に腹を抱えて笑うので、今朝の分も含めて纏めて仕返ししてやろう。
アルディさん。
ポロ村を笑う者はポロ村に泣くんですよ。
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