謎に蹴躓いて陰謀に囚われる

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暫く歩いていると、人の通らない草木に囲まれた道に、久しぶりの自由を手に入れた気になる。 誰の監視もない。自分だけしか存在しない場所。 このまま逃げても大丈夫かもしれないと…よぎった悪魔の囁き。けれど、その考えはすぐに消え去った。 なぜなら、前方に人がいることに気付いたから。 「こんにちはー」 やましさも手伝って、無駄に大きな声で挨拶をする。ビクっと大袈裟な反応でこちらを振り返るお方は、褐色の肌に顔の濃いイケメンさんだった。 驚かせちゃったかな……どこの国の人だろう。 ジュール王国では見ない肌色と金糸が使われた煌びやかな民族衣装がよく似合っている。 「やあ、こんにちは。黒頭巾ちゃん」 「いい天気ですねー」 良かった。言葉は通じるんだ。短い社交辞令を交わして通り過ぎようとしたら、バサバサとどこかで聞いたような音がした。 晴天に飛び立つ使者様ならぬ隣国の伝書鳩だ。 「あ、また迷い込んで来たんですね」 「また?」 「ええ。あの子、前にもこの辺で見たんですよ」 「……それは、困った迷い鳥だね」 「よっぽどこの庭園が気に入ったのかな」 「そうかもしれない。ここは綺麗だし君みたいな可愛い子にも会えるし……僕も気に入ったよ」 ふんわりとした微笑みを投げかけられて、カッと顔が熱くなる。この方、なかなか乙女心を掴むのがお上手のようで。
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