謎に蹴躓いて陰謀に囚われる

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その夜、わたしはベッドの中で悶えていた。 王宮図書館で借りた愛読書を手に、うひひ…うひょひょ…と漏れる笑いを噛み殺しながら。 ポロ村の女性陣の皆様、知ってましたか? 騎士様シリーズは既に16巻まで出ているんですよ。 さすが王都です。ポロ村では8巻が最新刊だったのに。 借りる時、アルディさんは物凄く嫌そうな顔をされてました。俺だと知っているのに見て楽しめるのかと聞くので、貴方を微塵も想像して読まないから大丈夫ですと答えておきました。 不思議な話ですが、本人を知ったとしても、わたしの中で出来上がった騎士様はクロードさんでもアルディさんでもない別人しか浮かんで来ない。 強固に凝り固まった想像上の人物に恋をしているわたしは、生身の男性と恋愛する気持ちが失われているのかもしれなかった。 読む手が止まらない、もっと見たい、という欲求を堪える。 今日は疲れているから早めに就寝するつもりだった。楽しみは明日に取っておこうと、後ろ髪を引かれる思いで本に栞を挟む。 部屋の電気を消して、ベランダのカーテンを閉めようと手にしたら、窓に映る黒い影に悲鳴が漏れた。 「……ク、クロードさん。ビックリさせないで下さいよ」 ほんの少しだけ窓を開け、俯いて佇む彼に声をかける。術の事があるので部屋に入れるつもりはなかったが、真剣な顔付きで話しがあると言われては招き入れるしかない。
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