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失礼ですよ、と窘めたいところですが、そろそろ確信に触れる事を言わねばなるまい。
「わたしが遺書をしたためた時、貴方はクロードさんの為に大根役者を演じて騙しましたよね」
「騙す?うっとりとしてたくせに何を言ってる」
「なっ!し、してません!うっとりじゃなくうっかりです!」
「どっちでもいいがな。で、それがどうした」
気にも留めずに先を促すアルディさんを殴りたい。
あの時、胸キュンだったとは死んでもバレたくありません。
「がぶ飲みしていたワインが効いたみたいでですね……クロードさんのお言葉を聞きもせずに頷いてしまったみたいなんです」
昨夜、告げられたばかりの真実をそのままアルディさんに語る。
『自分は産まれながらの貴族だから、あんなにハッキリと文句を言われた事がない。心細い思いを隠して気丈に振る舞う姿や、恐れもせずに放った言葉は胸に響いたよ。
突然ですまないが、好きになってしまったんだ。
俺の気持ちをどうか受け止めて欲しい』
絶句で固まるアルディさん。
わたしと同じ反応で良かったと思っていいのだろうか。
「よくよく考えたらですね、その後からクロードさんの様子がおかしかったですよね」
あの恐ろしい気遣いは、彼の気持ちを受け止めたわたしへの好意の表れだったのでしょう。
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