謎に蹴躓いて陰謀に囚われる

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「俺といれば済む話じゃねぇか」 「……相手は暗黒の覇王様ですよ」 「お前、俺をバカにしてるだろ」 いえいえ、そんな事はありません。 貴方の拳骨や肉をこれでもかと捻り上げる指先は、凶悪だと身に染みて分かってるつもりです。 ですがね、わたしがお会いした時のラウル様は茶目っ気のある紳士なイケメンさんだったんですよ。 ところがどっこい、覇王様は血も涙もない殺人兵器みたいな方だと分かりまして。 王宮の魑魅魍魎について勉強したわたしはですね、その裏表が余計に恐ろしく思うのですよ。 貴方に血と涙があるのかと言われたら微妙ですが、とりあえず人間であることは間違いないです。 「やっぱバカにしてんな……俺はそんなに頼りにならないか」 「そんな事はないですが……怖いです。2人共々、あの世行きになりそうで」 「あっそ。 じゃあ意地でも分からせてやるよ。俺がいる限りお前を死なせやしない。絶対に守るから心配すんな」 今の言葉、ちょっとトキメキましたよ。 高鳴る鼓動を悟られぬように、ワザと返事をしなかった。 「そうしねぇと俺がクロード様に殺されるからな」 それは余計でしたね。せっかくのトキメキが瞬時に消え去ったじゃないか。 「アルディさんを信じます。口は悪いしわたしへの態度もどうかと思いますが、クロードさんには忠実ですもんね」 問題が片付いたとは言えないが、心が軽くなったことに関してはアルディさんのお陰だ。
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