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「や、そこまで言ってないだろ」
いいえ!
貴方も所詮は王宮の人間です。腹の中では違う事を思っていても、裏や表やそのまた裏表を巧みに使いこなしているんです。
と、いま現在進行形で行われているこの状況を、廊下の隅っこで分析していた。
王妃様から「で、サエ様はどちらの殿方をお選びになるのですか?」と聞かれ、答えに詰まっていたところ、レアル様がサエ様に直接伺いたいと仰せでしたので、今から行ってらっしゃいまし。と部屋を出されたのだが……
数メートルも歩かぬ内に、あっという間に若い娘達に取り囲まれてしまっていた。
「アルディ様。噂は本当ですの?
クロード様がご婚約されただなんて……どこのご令嬢か教えて頂きたいですわ」
「そうですわ。
恋愛小説のモデルをされているわりに、誰も実際に女性とロマンスをしているクロード様を見たことがありません。それなのに、いきなりこんな発表をされては……あんまりですわ!」
「きっと目も覚めるような絶世の美女に違いないと思います。あのクロード様がお選びになるぐらいですもの……ねぇ、アルディ様?」
女性達の目に黒頭巾は映っていない。
というか、存在すらしていないのだろう。
集団で寄ってたかって蹴散らされ、こちらを見向きもしない彼女達にしたら、わたしは少々大きいゴミ屑みたいなもんだ。
それと、アルディさんの肩や胸や腕を、ベタベタベタベタ撫でくり回して詰め寄る様子は、噂の有無を確認したいだけではないような気がします。
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