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「しかし……クロード様はともかく、ラウル様が一目惚れとはな」
「アルディさん。
わたしは、内臓を引き抜かれて無残な死体を晒すのは嫌ですよ」
守ってくれるとおっしゃいましたよね。
じゃあ、わたしの代わりにご所望されて下さい。
「なぜ死ぬ前提で話をするんだ。
もしかしたら本当に惚れたのかもしれないだろ」
「……その線もあるんですかね?」
一縷の希望を持ちたいので敢えて尋ねます。
するとアルディさんは足を止め、わたしを上から下までジロジロ眺めて、うーんと傾げた首のまま、
「あり得ねぇな。
お前はいま、妖しさ満点の魔術士だぞ。
そうでなくても、あか抜けない田舎者で乳もない。加えてすっとぼけてるし風呂にも入らんとなれば、女として終わっているだろ」
と、彼の主観をベラベラと演説されました。
くっ……!反論したいが当たり過ぎてるじゃないか。
「……その終わってる女をですね、貴方の主人は好みだそうですよ」
「珍獣だからな。見慣れてなくて毒されてるだけだ」
ぬぐぐっ!
捻り出した切り返しなのにカウンターを喰らうとは。
騎士様とは、王様をお守りするだけじゃなく、色事に長け、口先に長けてないとなれないのだろう。
悔しい敗北感のまま、レアル様の待つ豪勢な扉の前に着いた。
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