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「悪いが、ここから先は俺は入れない。
王が呼んだのはお前だからな」
「ひ、一人で行けとっ?!」
クロードさんはエスコートしてくれたのに、貴方は見捨てると言うのですか。
わたしの監視と護衛が仕事じゃないのかと問うと、騎士団は王に危険が及ばないようにするのが仕事だと、正論をお吐きになられました。
「心配すんな。中にはクロード様がいる」
「……それも、微妙かと」
これから二者択一を迫られると言うのに、その片方の当事者がいらっしゃるとは。
「なんだお前、ラウル様に殺される方を選ぶつもりか?」
「まさか!……でも、クロードさんを選ぶと婚約を受けたみたいでですね」
なんか、それってどうなんでしょう?
「じゃあ、助言をやろう。
深く考えなくていいから、とりあえずクロード様を選んでおけ。少なくとも命は守れるからな」
後の事はまた考えればいい。今を乗り切る事に集中しろと、他人事だからか、割と簡潔で適当な物言いで助言を済ませると衛兵に合図を送る。
「ほら、行って来い」
「ちょっ!ま、まだ心の準備が出来てな」
強引なアルディさんによって、両脇に開かれた扉の中に突き飛ばされた。
「大丈夫か?」
「……はい」
転びそうな身体をしっかりと抱きとめてくれたのはクロードさん。
彼の腕の中で、あの野郎!と振り返えれば、閉まりかけた扉に丁寧に腰を下り曲げ、チラリと覗いた顔から舌を出すアルディさんが見えた。
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