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「サエよ。急に呼び立ててすまなかったな」
王宮の作法がこれで良かったと思う。
アルディさんに対する怒りで引き攣る顔を、笑顔に変える時間があるから。
伏せていた頭を静かに持ち上げ、王様への挨拶の口上を述べた。
「とんでもありません。
レアル王様におかれましては、本日もご機嫌麗し…っ!!」
ヒィッ!と飛び上がりかけた自分を何とか堪える。
王座の隣に二者択一の片割れが足を組み、わたしを見降ろしているではないか。
なぜ、どうして?!
当事者が勢揃いなことに狼狽えていると、前方のクロードさんが落ち着けと優しく微笑んでくれた。
「早速だが、困った事になっている。
こちらのラウル王に私は、この国のものなら何でも所望するがいいと約束してしまったのだ。
しかし、望まれたお前がクロードの婚約者だと聞いた。今一度確認するがそれは本当のことなのだな?」
「…………はい」
「分かった。
ラウル王よ、聞いての通り私の不手際であった。
部下の婚約者を取り上げる訳にはいかないのでな、代わりのものをご用意させて頂きたい」
色々と追及されると思っていたのに、意外にあっさり命の危機を脱する事が出来てホッとしかけた矢先、
「レアル王様。
それではあまりに国の面目が立ちません。
知らなかったとは言え、一度約束したものを反故にするのはいかがなものかと」
と、異議を唱えるノエル様に竦み上がった。
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