新たな謎に包まれて

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新たな謎に包まれて

放任主義のラウル様は、今日も朝からお仕事だ。 あいも変わらず日中は、コルゼさんと2人きりの気まずい時間をやり過ごし、居たたまれなくなったら適当な用事を申し付けて部屋を抜け出していた。 行き先は決まっている。 わたしの心のオアシスであるミゲルさんのところだ。 「また来ちゃった。手伝うよ」 「サエ様。毎日のように来られたら困ります」 「様はいらないし、敬語もやめてってば」 「そういう訳には……王の想い人なのに」 「それね、新手の嫌がらせの変な噂だから真に受けちゃダメだからね」 「いやでも……あの部屋は本当に特別なんだよ」 何度も聞かされたから知っている。 王妃候補しか入れないところらしく、そんなお部屋に堂々と居座るわたしをミゲルさんは様付けで呼ぶけれど。 貴族でも何でもないただの村娘が王妃候補とは、冗談にもならない笑い話だろう。 ぶっ飛ぶぐらいの豪華なお部屋ではあるが、いくらなんでもラウル様がそんな特別な場所を提供してくれるはずがない。 純真な彼は悪意ある噂を見抜けないだけなのだ。 干し草を集め、馬にブラッシングし、餌を切り刻む作業をすればもう夕刻になる。 泥だらけのまま部屋に戻れば、いつものごとくコルゼさんのお説教が待っていた。 労働の疲れと耳の疲れをほぐして後は就寝を待つばかり。 夜はラウル様の宣言通り抱き枕としての任務を遂行するだけなのだが、怪しげなお香やイヤラシイことが一切ないので、ここぞとばかりに寝物語として人類皆兄弟という有り難い教えを熱弁する。
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