それぞれの過去。それぞれの想い。

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それぞれの過去。それぞれの想い。

消したいものがあった。 何度も何度も何度も、狂うほどの鮮明さで蘇る記憶の一部を。 痛過ぎる。死にたくなるぐらいに。 いっそ誰かに殺されたいと願い、乞いながら、浅ましく逃げようとする自分の卑怯さに呆れ、叶わぬ夢を見ることに疲れて眠りに落ちた。 「ベリス。いい加減にしてくれ」 顔を濡らす涙に気付き嫌悪する。 寝ても覚めても自己懺悔を繰り返す胸の内に吐き捨てた。 返事はない。 いつもながら人の話を聞こうとしないガキにため息が出る。 「もう終わったことだ。いつまでもメソメソするなら出て来なくていい。そこに篭ってろ」 疼く胸に意識を集中させる。硬い甲羅の檻を頭に描くと、まだ慣れない " 自分 " の姿をそこに閉じ込めようとして、うっかり指の先を掠めて流れてきたものに吐き気が込み上げた。 ごめん。僕のせいだ。貴方をこんな目に合わせるつもりはなかったんだよ。本当だ。謝っても許されない。一生恨んでくれていい。ごめんごめんなさい。 「うるさい。黙れ。聞き飽きた」 酷いノイズに頭をやられそうだ。 引き摺り込まれたくない。強引に遮断を進めると最後の絶叫が身体中を駆け巡る。 ごめんなさい! レアル王!! たまらずに胃液を吐いた。 最悪な気分だ。体調も良くない。 あのガキ……いつからマトモに食ってないのか。 苦痛を伴う心身を持て余し、冷たい地面に崩れ落ちる。 「王と呼ぶなと言っただろ。次呼んだら殺すからな」 ああ、遮断したつもりなのに。 殺すなど笑えることを言った自分が愚かしい。 ……同調したようだ。ベリスの願いに。
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