「絶対に守るって、あの時誓ったの」

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 都市は飢えていた。市民たちはありとあらゆるものに糧を求め、もはや雀一羽、鼠一匹すら街路に認めることはできなかった。  暗く沈痛な雰囲気に包まれて、少女シビラはとぼとぼと歩いていた。身に纏っている長外套は汚水と埃に塗れている。群青の瞳は疲労で濁り、亜麻色の栗毛はすっかりくすんでしまった。  空は厚い雲に覆われ、時折、敵の噴進弾が流星のような輝きを放って飛び去る。弾は都市上空で炸裂し、充填された毒素を紫の雨にして、街区の至る所に撒き散らした。  懐に手を伸ばして、首から下げているお守りをシビラはぎゅっと握りしめた。いつから持っているのか知れない、半分に切った銀のメダルのお守り。分断された花の意匠。家族すら失った彼女の、唯一の財産。    ふと、シビラは路傍に目をやった。そこには下着だけの男が、半身を縁石に預けて座り込んでいた。ぶつぶつと何かを呟いている。散布された毒素に神経をやられたのだ。  彼女は、身震いした。自分も、いつあのような状態になるのか分からない……
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