「絶対に守るって、あの時誓ったの」

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 その刹那だった。 「伏せて!」  力強い、冴え渡るような声が聞こえた。シビラは声が終わらぬうちから、頭を腕で防御し地面にぴったりと伏せた。  直後、頭上で鋭い爆発音が響き、真っ白な光が炸裂した。キメラが断末魔の叫び声を上げる。醜怪な生物兵器は胴体から臓物を撒き散らし、既に絶命していた。  爽やかな声がシビラの耳朶に響く。 「危ないところだったわね」  そこには、黒い外套を身に纏った少女がいた。年齢は、シビラと同じくらいだろうか。フードからのぞく髪の毛は燃えるような赤、瞳は吸い込まれるようなアメジスト。整った顔立ちはどこか大人びていて、静かな水面の如き冷静さを湛えていた。 「あ、あの……あっ……!」  シビラの言葉は、無理やり中断させられた。今更になって刺された右足が激痛を訴え始めていた。  赤髪の少女はつかつかと彼女の傍らに近寄ると、先ほどの凛々しい声とは一転して、穏やかに慰めるような声で言った。 「待って、動かないで。応急処置をしてあげる」  聞いたことのない不思議な呪文を唱えて、少女は霊妙な緑の光を発する護符を傷口に貼った。見る間に出血が止まり、痛みが緩和されていく。  その経過をじっと観察していた少女は満足気に頷くと、半ば放心しているシビラにそっと語りかけた。 「これで立つことはできるはずよ。さあ、ここから離れましょう。またいつキメラが来るか分からないわ。この先に私の隠れ家があるの。そこで治療の続きをしましょう」
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