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4 出会いと再会
「これは絶対に誰かの陰謀ね!」
朝食の席でチェリィはそう断言しました。
宿屋の食堂はたくさんのお客さんがいて賑やかですが、彼らの話題は昨夜公園であった火事のことで持ち切りでした。現場ではやはりドラゴンの足跡が発見されたらしく、みんな不安そうな様子です。
でもチェリィの言い分はこうでした。
「犯人はわざと騒ぎを起こしてドラゴンさんに濡れ衣を着せているのよ」
「なんの為に?」
朝食のサラダをフォークでつつきながらレインは尋ねました。
「それをあたし達が調査するのよ!」
朝っぱらからやる気いっぱいのチェリィは、すぐ横の席で新聞を読んでいるジミーが思わずびくりとしちゃうくらいの大きな声で宣言しました。
彼女とは対照的にレインはうんざりとした様子ですが、彼がはつらつとしていることの方が珍しいくらいなのでチェリィは特に気にしません。
すぐに調査に乗り出したいところでしたが、まずはこの国で住む場所を決めなければなりません。
幸いなことに昨日出会った大神官さんがその辺りのことも考慮してくれたらしく、よい宿泊先を見つけてくれました。
朝ご飯を手早く済ませて身支度を整えたチェリィ達は、大神官さんの紹介でやってきてくれたブラウンさんという初老の女性と出会いました。
ブラウンさんはとても上品で優しそうなお婆さんで、昔エイミーの世話係をしていたこともあるそうです。
「はじめまして。あなた達が例のあれを持っているという子供達ね」
「例のあれってドラゴンの卵のこと?」
「シッ、こういうことは誰かに聞かれると厄介だから言葉を濁さなきゃダメよ」
チェリィ達はブラウンさんのノリに合わせてドラゴンの卵のことを例のあれという表現で通すことにしました。
「それじゃあさっそく行きましょうね。私の家へ案内するわ」
三人はブラウンさんと一緒に馬車に乗りました。
ブラウンさんはこの国へ来たばかりで右も左もわからない田舎者の子供達の為に、自分の家の部屋を貸してくれるそうです。
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