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さっきレインが立てた被害妄想説が濃厚になってきたところで、ドラゴンさんは深々と頭を下げて言いました。
「どうか頼みがある、その卵が孵化するまで守ってくれ」
「なんで?」
レインがいきなり反抗的な態度を見せました。
もし彼がチェリィの隣に座っていたらぶたれているところでしたが、幸いにも二人の間にはジミーが座っています。
三人はヒソヒソ声で話し合いを始めました。
「絶対にやめた方がいいって」
と、レイン。
「でも困っている相手をほうってはおけませんよ」
と、ジミー。
「レインはいつも自分のことしか考えないんだから」
と、チェリィ。
しかし、チェリィは考えました。
レインの言う通りこの卵は間違いなくトラブルの元です。
困っている相手をほうってはおけませんが、それによって自分達が困る事態になるのは目に見えています。
けれどこの卵を持っていたあの人はチェリィの母を頼って来たのです。本来は母に託されるはずだったものを簡単に放棄するわけにはいきません。
それにこんなすごそうな相手がわざわざ頭を下げてくるのだから、やはりただ事ではないと考えるのが自然でしょう。
「あたしはドラゴンさんの頼みを聞いてあげた方がいいと思うの」
「ああそう」
諦めたのか単純に考えるのが面倒になったのか、レインもそれ以上の言及はしてきません。
ドラゴンさんは安心したように頷くと優し気な声で言いました。
「ありがとう、さすがはエイミーの娘だ」
「へっ?」
チェリィは変な声を上げてしまいました。
なぜドラゴンさんは母の名前を知っているのでしょう。
あの女の人も母のことを知っていたし、この国にも母の名前が知れ渡っているのでしょうか。
ですが事情を聞こうと思った矢先にドラゴンさんの姿が徐々に消えていくのに気付きました。
「私はそなた達の意識に直接語りかけていたのだが、そろそろ時間切れのようだ。卵を、そしてこの国を頼むぞ」
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