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道端に設置されていた観光マップを頼りに三人は歩いていきました。
さっきまでは楽しそうに行き来する人達の声が聞こえてきましたが、先へ進むにつれて人々の声が遠くなっていきます。
真っ直ぐに続く広い道の端にはドラゴンを模した像が一定の間隔で置かれるようになってきて、これまで見てきた町の様子とは少し変わってきていました。
「あの建物はなにかしら?」
高い塀に囲まれ、厳かな雰囲気に包まれた大きな建物の前へ出ました。
ここにもドラゴンを模した像があり、壁や柱にもドラゴンの模様が施されています。
「ドラゴンの神殿といって、この町の観光名所なんだって」
ジミーがさっき観光マップで見た知識を披露します。
中に入って見学やお祈りも出来るそうなのですが、今日は観光に来たわけではないのでこの建物を無視して先へ進んでいかなければなりません。
ちょっと名残惜しく思いながらも神殿を通り過ぎようとした時、チェリィ達の横を高価そうな馬車が走って行きました。
何気なく様子を見ていたら馬車は少し離れた場所で止まって、中から美しい法衣を身にまとった少女が降りてきました。
横顔しか見えませんでしたが、真っ白な肌と宝石のように綺麗な瞳をした少女です。横二つにまとめた黒髪はクルクルと縦に巻かれていてお姫様みたいでした。
けれどなぜだかその姿を見たとき、チェリィは背筋がぞっとするような感じを覚えました。
「隠れて!」
咄嗟にチェリィはそう言って近くの物陰に身を潜め、ジミーとレインもわけがわからないながらも一緒に隠れました。
なぜでしょうか、あの少女から嫌な気配を感じたのです。
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