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レインに偉そうに言われるのは腹が立ちますが、彼のほうが先輩なのでここは真面目に従います。
「兆しねぇ」
ちらりとレインのことを横目で観察しながらチェリィは考えました。
ジミーの方は何年たっても相変わらず地味なままですが、レインは成長する度に見た目が良くなっている気がします。
面差しにはまだ子供っぽさが残っていますが、彼ももう十五歳になるので徐々に大人びた顔になってきているのです。
その為か余計にチェリィの鼻につくようになっておりましたが、最近は中身も成長してきたのか意外にも真面目にチェリィの相手をしてくれるようになりました。
とはいえやっぱり気に入らないものは気に入らない。
ふてくされているチェリィにジミーは言いました。
「そんなに慌てるようなものかな?」
「いつまでもレインにすら追いつけないってのが癪なのよ」
チェリィは素直に言いました。
そもそも彼の場合はもっと小さな頃から魔法を扱えたので、スタートの時点でかなりの差がついているということはチェリィにもわかっていたのですが。
「俺はお前のおもりがいつまでも終わらなくて不安」
レインはつくづくと言いました。
「ところで相談があるんだ」
そのままだらだらと休憩する流れになるかと思いきや、唐突にレインがそんなことを言いました。
「実はしばらくの間家を出たいんだ」
チェリィ達はやれやれと言った様子です。
「またおじさんと喧嘩でもしたの?」
「家出にはリスクの方が大きいので賛成するわけには」
「そういうのじゃないし」
てっきり父に嫌気が差したから家出をしたいのかと思いきや、そうではないようです。
「久しぶりに母さんが戻ってくるらしい」
「え、復縁するの?」
「そういうのじゃないし。そうだったら嫌だし」
本当に嫌そうに言う彼は幼少期のトラウマに未だに苦しめられているようです。
レインはやたらと母を恐れておりますが、その母というのも優秀な魔法使いだそうです。一体どんな人なのかチェリィは少なからず興味がありました。
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