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ドラゴンの祟り。
ここ数ヶ月の間に国中で悪いことが連続で起こり、現場には必ず大きな生き物の足跡が残されているそうです。
実際にドラゴンらしき姿を見たという情報もある為、人々はこれをドラゴンによる祟りなのではないかと恐れているのです。
神殿では毎日あのシルヴィアという巫女がドラゴンの怒りを鎮める為に祈りを捧げているらしく、巫女の祝福を受けた者は不幸にも祟りに見舞われたとしても必ず傷一つなく助かっているとかなんとか。
なんだかきな臭いものを感じる、かなり気掛かりな件でした。
「これはあれね、ドラゴンさんの為にもその祟りとやらについて調べてみないといけないわね」
チェリィは決意を固めますが、なるべく危ない事態は避けたいと思っていた男の子達は嫌そうです。
「ところでまったく関係のない話だけどいい? あたしお母さんのことについてもっと知りたいの。それに、お父さんについてもなにか知らないかしら?」
その問いを耳にした途端、大神官さんの眉が少しだけぴくりと反応しました。
「お母さんはお父さんについて全然教えてくれないの。お父さんがどんな人で、二人の間にどんなラブロマンスがあったのか知りたいわ」
「いえ、そのことについては、私はなにも」
明らかになにかを知っている人間の反応です。空気の読める男ジミーは更に問い詰めようとするチェリィを制します。
「なにか言い辛い事情があるのでしょうか?」
「えー? けちけちせずに教えてくれたっていいでしょ」
「しかし、それはエイミー様の口から直接聞いた方が」
しぶる大神官さんにレインは言いました。
「師匠はそういうこと教えてくれないし」
「そうよ言わないのよ。そりゃ、あたしだってお母さんから直接聞けるのが一番だけど」
そう訴えてくるチェリィに大神官さんはどう対応すればいいのかを悩んだようです。
しばらくの間難しそうな顔をして考え込んでいましたが、やがて意を決したように顔を上げて答えました。
「やはり私からはなにも言えません」
チェリィはむくれました。
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