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チェリィ自身、母のことを興味本位だけで聞き出していいものかどうか悩みどころでした。ジミーの言うようになにかデリケートな部分に踏み込むことになってしまうとしたら、さすがに良心がとがめます。
「そこで悩むくらいならもう考えるなよ」
「なによ、偉そうに」
ふてくされながらチェリィはベッドに腰掛けると、卵を抱きかかえて俯きました。
「でもね、お父さんのことくらいは知りたかったの」
父親のことは母親のこと以上に謎に包まれていました。いつか母に全てを教えてもらえる日がくるのでしょうか。
「ね、ねぇあれ!」
突然ジミーが窓から身を乗り出して叫びました。
なにかと思って彼の横から外を眺めてみると、遠くの方で炎が上がっているのが見えました。あそこは街の公園でしょうか、夜の闇の中で赤々とした炎が空に昇っていきます。
あれをただのキャンプファイヤーだと解釈するには無理があるくらい全力で燃えています。
「えーと、誰か煙草のポイ捨てでもしたのかしら?」
「そうでもなさそうだけど」
窓から外の様子を見下ろしていたレインは言いました。
彼の視線を追って窓の下の方を眺めてみると、ご近所の人達がドラゴンがどうとか祟りがどうとか騒いでいるところが見えました。
「もしかして、あれが?」
なんか悪い予感がしてきます。
自分達はすごく大変な事態に首を突っ込もうとしているのではないかと、チェリィは今更ながらに思うのでした。
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