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レインのぼやきなんてどうでもいいのですが、ここまで不安そうな彼の顔を見られるというのも珍しい。
少なくとも薬草摘みの続きよりもこっちの方が面白そうだったので、チェリィは身を乗り出しました。
「ねぇ、そんなに嫌なら魔法でなんとかしちゃいなさいよ」
チェリィはかなり雑なアドバイスを炸裂させます。
「魔法で風邪をひかせて寝込んでいてもらいましょう!」
「確実に返り討ちに遭うだろ。あとそれ呪いだから、使っちゃいけないあれだから」
「の、呪い?」
物騒な言葉が飛び出してきてジミーはびくっとしました。
「じゃあダメね」
「あの、呪いって?」
「んっとね、魔法には良い魔法と悪い魔法があるんですって」
「その良い悪いは誰の物差しが基準になっているの?」
「そこはまだ教わってないわよ。教える側が忘れちゃったんですもの」
チェリィはレインに皮肉げな目を向けました。
けれど教えてもらったこともあります。
まず良い魔法。これは人を助ける為の魔法。人の生活の役に立つ為の魔法。身を守る為の魔法。
「超簡単に言うと良いことに使う魔法は良い魔法なのよ」
「ずいぶんぞんざいなんだね」
「しょうがないわよ教える側がぞんざいな覚え方しているんだから」
再び皮肉げな視線を向けるチェリィですが、レインは気付かなかったフリをします。
「で、悪い魔法っていうのは人に迷惑をかけるような魔法ね! 悪い魔法は呪いのこと。だから決して手を出してはいけないと決められているの」
この説明がぞんざいなのもレインのせいです。
若干ぷんすこしながらも語るチェリィにジミーは少し苦笑しました。
思い出したくもありませんが、以前会ったことのあるヴォーロという魔法使いのお爺さんは悪い魔法を使う人間でした。
いたいけな子供をとっ捕まえて魔力を奪うのも当然悪いことですし、魔物を召喚するのだって悪い魔法です。おそらくあのやかましい人形にも悪い魔法が使われていたのだろうと思われます。
「その話題は続けたくない」
彼も当時のことを思い出したのかうんざりとした表情になります。
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