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5 巫女
チェリィ達は二年ぶりにリューインと再会しました。
チェリィの知っていた頃よりも随分と背が高くなり、顔も声も大人っぽくなっていましたが中身は相変わらずのようです。
声や外見の成長以外はなに一つ変わっていないことにチェリィはとても安心しました。
「俺さ、旅の途中でこの国に立ち寄ったんだけど、さっきの爆発に巻き込まれて瓦礫の下敷きになってたんだ。だから遠慮なく同情してくれよ」
「同情はするけど、まさかこんなところであんたと再会するなんてね」
再会の喜びやら驚きやらを語りつつ、お互いの状況についても教え合いました。
この国に来たばかりでまだ泊まる場所を見つけていなかったリューインは、チェリィ達の事情を聞き終えて強引についてこようとしました。
「俺もお前達の手伝いをするからさ、一緒に泊めてくれよ!」
彼はこのコネをうまいこと利用して宿にありつくつもりでいるようです。
そんな図々しいことをブラウンさんに頼んでいいものかと思ったのですが、このまま放置するのも可哀相なので一応連れていくことにしました。
そしてブラウンさんの家へ戻ってきたチェリィ達はさっそくリューインのことを紹介して彼の事情を説明しようとしました。
しかし家に連れてきた途端リューインは派手なスライディング土下座を披露してブラウンさんの目を点にさせると、勢いに任せて全力で頼み込みました。
「超困っているのです。しばらくの間ここに泊めてください!」
豪快な動きを見せつけられて目を点にしたままのブラウンさんはチェリィ達に説明を求めました。
それから話を聞き終えたブラウンさんは、彼がチェリィ達の友人だということもあって快くこのお願いを聞き入れてくれました。
けれどなにか気になることでもあったのか、なぜかリューインの顔をまじまじと観察して彼女は首を傾げます。
「うーん、気のせいかしら。あなたの顔をどこかで見たことがある気がするのよね」
「ふっ、初恋の人に似ているとか?」
リューインのそのボケに真面目に突っ込んでくれる人はいません。
実際にリューインがこの国に来ることは初めてであり、ブラウンさんもよその国へは滅多に行くことがないそうなので彼とはこれが初対面のはずです。
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